歯槽膿漏と糖尿病の関係

糖尿病の患者さんが歯の治療を行った場合、傷がふさがりにくい、出血が止まりにくい、感染を起こしやすいなどの問題が起きる場合があります。

ではなぜ、糖尿病になると傷が治りにくいのでしょうか?

この命題を解く鍵となるのが、ブドウ糖だったのです。

糖尿病患者の傷が治りにくい理由

人間の体の細胞には、生きていくためにエネルギーが必要ですが、そのエネルギー源となるのが『ブドウ糖』です。

ブドウ糖は、血液に運ばれてからだの隅々の細胞に送り届けられますが、そのときに、細胞にブドウ糖を受け渡す重要な役割を担うのがすい臓から分泌される『インスリン』というホルモンです。

ところが、糖尿病の患者さんには、このインスリンが不足していて、この機能がうまく働いてくれません。

そのために、血液の中にはブドウ糖がたくさんあるのに、細胞には届けることができず、細胞が栄養不足になって働きが低下してしまいます。

さらに、細胞の栄養不足を補おうと、体が筋肉などのタンパク質を削ってこれをブドウ糖に分解し、血液中に放出するようになります。

それでもインスリンが足りないために、栄養は細胞に届かず、血液中のブドウ糖はますます余って血糖値だけが上がるという悪循環になるのです。

本来であれば、傷は新たな細胞に覆われて治っていくものですが、治るはずの傷は、タンパク質が合成されないために、表皮も組織もなかなか回復することができないというわけです。

恐ろしいことに、血糖値が高い方の体の中では、このようなことが起きていたのです。

歯槽膿漏が糖尿病を悪化させている!

糖尿病にかかると血糖値が上がり、血管がもろくなります。

そのため、免疫反応が低下して炎症が起きやすくなったり、血流が悪くなって傷の治りが悪くなってしまいます。

また、神経や目にも異常をきたすこともあります。

歯科の観点からは、もし、糖尿病の患者さんが、お口のケアを怠った場合、簡単に歯肉炎になってしまい、さらに仮にそれを放置した場合には、重度の歯周病になる可能性があることを警告しておきます。

 

では、なぜ、歯槽膿漏があると、血糖値が高くなるのでしょうか?

歯槽膿漏のような慢性疾患があると、炎症性物質であるTNFαが多量に分泌されて、このTNFαがインスリンの働きを抑制してしまうため、血糖コントロールが悪化して、高血糖状態になります。

また、反対に、歯槽膿漏治療を行い、病原性細菌を取り除いて炎症が消えると、炎症性物質の分泌も抑制されて、結果的にインスリンの抵抗性も減ることになり、血糖コントロールが改善します。

実際、2型の糖尿病で重度の歯槽膿漏をお持ちの患者さんで、歯槽膿漏治療をすると、血糖値が改善した事例が多くあります。

このように、歯槽膿漏と糖尿病の間にも、やはり密接な関係があったのです。