プラズマレーザーストリークは、高出力の熱と光のエネルギーによって、従来の歯科レーザー機器よりも、効果的に歯周病(歯槽膿漏)治療が可能な、最新のレーザー機器です。
また次亜塩素酸電解除菌水とプラズマレーザーを併用して行うペリオトリート歯周病治療は、麻酔がほとんど必要なく、短期間で歯槽膿漏治療ができる特徴があります。
プラズマ高球体エネルギー
レーザーとは光を増幅させて一方向に照射するものです。
エネルギーの弱いものから強いものまでさまざまなものがあります。弱いものではレーザー光線、強いものではレーザーメスなどがあります。
美容医療ではシミ取りやシワ取りなどにも広く使われていますが、歯科でもレーザー治療は広く使われています。
ただ、従来はエネルギーが低いものがほとんどで、あくまでも治療の補助として使われるにとどまっていました。
しかし、Nd:YAGレーザーという強いエネルギーを持つ歯科用レーザーが登場し、重度の歯周病(ひどい歯槽膿漏)治療に応用できるようになってきたのです。
Nd:YAGレーザーの殺菌効果については世界中で研究されており、多くの論文が出ています。
有名な研究はC.J Whittersらの報告です。虫歯菌の代表であるミュータンス菌にNd:YAGレーザーを照射した結果、最短2分で99・9%の殺菌効果があったことが報告されています。
日本ではかなり前から、大学病院を中心に虫歯治療にレーザーが使われ始めています。日本大学松戸歯学部は、初期の虫歯に対してこのレーザーを使った治療の効果を報告しています。
Nd:YAGレーザーは歯周病や虫歯の治療以外にも、さまざまな用途で使われています。
レーザーには強い殺菌効果があるため、初期の虫歯に対してレーザー治療が行われるようになってきています。
近年、歯の根元にできる「根面う蝕」が高齢者を中心に増加しており、「大人の虫歯」として話題になっています。高齢者に多い虫歯で、現在、急増中ですが、レーザーはこの削りにくい部分の虫歯治療に有効であるといわれています。
虫歯の原因は虫歯菌が糖質を食べて出す酸に歯が溶かされることで起こります。
歯のエナメル質にレーザーをあてると、この酸に対する抵抗力が増し、虫歯になりにくくなることが多くの研究によりわかっています。
レーザーに麻酔効果がある、というと驚くかもしれません。
しかし、すでに大学病院などではレーザーが麻酔の代わりに使われています。
レーザーによる熱の働きにより、疼痛閾値(痛いと認識される刺激の最低強度)が上昇し、歯科で使う表面麻酔と同じ効果が得られることが多くの研究でわかっています。
東京都済生会中央病院歯科の土肥順尚歯科医師のグループは病院職員14名を対象に、レーザーによる麻酔効果と表面麻酔薬(塗布するタイプ)による麻酔効果を比較しました。
具体的には注射針を使って痛みの度合いを数値化し、比較しています。
その結果、どちらにも麻酔の効果が認められ、その効果は両者で差がなかったと報告しています。
土肥歯科医師の論文には、「(局所麻酔薬が)唾液で希釈されてしまう事などを考慮すると、レーザー治療が子どもにも有効ではないかと」と考察されています。
ストリークレーザーは、一般的な歯科用レーザー機器よりも高出力なので、表面麻酔効果だけではなく、歯や歯茎も鈍麻と呼ばれる針を使わない麻酔が可能です。
そのため、通常では麻酔が必要な場合でも、ほとんどストリークレーザーで針を使わない鈍麻をして、治療が行えます。
歯周病に対しても、レーザー治療が非常に多く取りいれられています。
一般的な歯茎を切り開いて内部の汚れを取り除くフラップ手術のときに、歯石を取り除くことに使われたり、ポケットの中の炎症部分を焼いたり、殺菌したりするなどです。
次亜塩素酸電解除菌水とプラズマレーザーを併用して行うペリオトリート歯周病(歯槽膿漏)治療では、歯茎をほとんど切開しません。
その代わりに、プラズマレーザーと次亜塩素酸電解除菌水を使って、歯垢(プラーク)と歯石を取り除く処置を行います。
なぜ、フラップ手術と同じ処置を切開せずにできるのでしょうか。
わかりやすく説明していきましょう。
ポイントの1つはプラズマレーザーです。
歯科用レーザーの一種であるNd: YAGレーザーには殺菌や歯質強化、麻酔の効果などさまざまな効果が明らかになっていることは、前記しました。
次亜塩素酸電解除菌水とプラズマレーザーを併用して行うペリオトリート歯周病(歯槽膿漏)治療では、このプラズマレーザーをまず、麻酔の代わりとして使います。
プラズマレーザーを歯にあてると熱や光が歯の血管に作用して、一時的に麻痺の状態が起き、麻酔がかかります。
この効果は歯茎にも作用するので、局所麻酔を使う必要はありません。さらにプラズマレーザーの熱と光のエネルギーにより、歯の根にこびりついている歯垢(プラーク)や歯石をやわらかくし、歯の根からはがします。
するとポケットから、痛みなく、清掃器具のスケーラーを入れて歯垢(プラーク)や歯石を除去できるようになるのです。
「切開せずに、なぜ歯肉の下の歯垢や歯石などを取ることが可能なの?」と疑問を持たれるかもしれません。
しかし、フラップ手術の適応になっている、歯周ポケットが5㍉以上と深い患者さんでも、プラズマレーザーの熱と光のエネルギーでやわらかくなり、歯周組織からはがれた歯垢(プラーク)や歯石は、そういった深いポケットでも、十分に取り除くことが可能です。
さらに従来の治療では、スケーラーから出てくる水で歯垢(プラーク)や歯石を洗い流すだけですが、次亜塩素酸電解除菌水とプラズマレーザーを併用して行うペリオトリート歯周病(歯槽膿漏)治療ではこのとき、水ではなく、次亜塩素酸電解除菌水を使います。これがもう一つのポイントです。
次亜塩素酸電解除菌水を使うことで、残っている見えない歯周病菌や虫歯菌を殺菌しますので、ほぼ完全な歯槽膿漏治療が可能です。
一般的なフラップ手術をすると、歯茎を切り開きますので、術後は歯茎が大きく下がります。
実は歯茎が下がるということは、美容的な問題以上に、大きな問題があります。
歯茎は歯槽骨、歯根膜、セメント質とともに歯の固定に重要な役割を果たしています。このため、歯茎が下がる、つまり少なくなるとその部分の歯が不安定になります。
さらにその影響は土台の歯槽骨にまでおよびます。
歯槽骨を粘土におきかえてみましょう。
粘土に埋め込んで揺らすと粘土は割れてしまいます。
同じように歯が揺れることで歯槽骨は吸収される。
つまり溶け出してしまいます。
さらに上にのっている歯は歯周病の影響で、歯周組織が壊れかけているため、揺れて歯槽骨が減ることで歯周病も悪化するという悪循環になってしまうのです。
では次亜塩素酸電解除菌水とプラズマレーザーを併用して行うペリオトリート歯周病(歯槽膿漏)治療の手順を紹介しましょう。
顕微鏡で歯周病菌や虫歯菌の状態を観察します。
歯茎の部分全体にプラズマレーザーで麻酔をかけます。
プラズマレーザーを歯周ポケットの内部に当てて、レーザーの熱と光による働きで、歯垢(プラーク)や歯石がやわらかくなります。
スケーラーを使い、殺菌水とともにポケットから、歯と歯茎の内部の歯垢(プラーク)、歯石を取り除きます。スケーラーの先から出ている次亜塩素酸電解除菌水で患部を洗うことにより、残っている歯周病とむし歯菌を殺菌します。
最後にもう一度、顕微鏡検査を行い、口の中の菌がいなくなったかどうかを確認します。
その後は口の中の殺菌状態を保つために、毎日自宅で、次亜塩素酸電解除菌水のうがいをしてもらいます。