重度歯周病(ひどい歯槽膿漏)と糖尿病

糖尿病とは

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糖尿病は、糖を消費するために必要なインスリンの量が不足することによって、血液中の糖の値(血糖値)が高くなる病気です。糖尿病にはⅠ型とⅡ型があり、下記のような違いがあります。

●生活習慣に関係なく若者にも起こるⅠ型(治療にインスリンが不可欠なためインスリン依存型糖尿病とも呼ばれます)

●生活習慣に大きく関係するⅡ型(インスリン投与が不要な場合もあるためインスリン非依存型糖尿病とも呼びます)

特に、Ⅱ型は、生活習慣病ともいわれるように運動習慣や食生活が関連しています。肥満の人にも起こりやすく、また、歯が弱くなったり、歯を失ったりして柔らかい糖質の多いものを食べ続けると血液中に糖が増えて糖尿病になる確率も上がります。(なぜなら柔らかい食べやすいものには糖質を多量に含むものが多いためです)

 

そして、いったん糖尿病になると感染症への抵抗力が落ち、ほかの病気にもかかりやすくなります。血流の障害により口の中でも歯肉の血管が弱り、感染に抵抗する力も低下してしまい、さらに歯周病も進行してしまいます。

重度歯周病(ひどい歯槽膿漏)と糖尿病の関係について

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近年、多くの研究者が、歯周病が全身に及ぼす影響に注目し始めました。

 

中でも糖尿病は、歯周病と密接な関係が確認され、ある研究機関の報告では、歯周病菌の細菌数を減らす治療をしたところ、それまで良くならなかったヘモグロビンA1c(過去1~2ヶ月の血糖値の状態を示す指標)が劇的に改善した人もいたほどだったのです。

 

また、歯周病菌が血管内に入ると、血栓が出来やすくなり、心臓病や脳梗塞のリスクを高めるという研究報告も相次いでいます。さらに、歯周病が悪化すれば、間接的に失明、手足の切断、突然死の引き金になるかもしれないとも言われています。

 

歯周病が糖尿病を悪化させる理由として、糖尿病は血液中にある阻害物質が増えることで、糖分を細胞にしまうインスリンの働きが弱くなるという性質があります。実は、歯周病で歯茎が炎症を起こすと、この阻害物質が増えてしまうことが近年の研究からわかりました。

 

これは、体内に侵入した細菌やウイルスと戦う免疫細胞のマクロファージが、細菌と戦う時に阻害物質を出すからなのです。つまり、歯茎で歯周病菌とマクロファージが戦うと、マクロファージから阻害物質が放出され、インスリンの働きが阻害されて、糖尿病が悪化するわけです。そして、この状態が続くと、糖尿病によって体の抵抗力が下がり、歯周病菌がますます増えるという悪循環に陥ってしまいます。

糖尿病の患者さんの傷が治りにくい理由

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糖尿病の患者さんが歯の治療を行った場合、傷がふさがりにくい、出血が止まりにくい、感染を起こしやすいなどの問題が起きる場合があります。

 

ではなぜ、糖尿病になると傷が治りにくいのでしょうか?

 

この命題を解く鍵となるのが、ブドウ糖だったのです。

人間の体の細胞には、生きていくためにエネルギーが必要ですが、そのエネルギー源となるのが『ブドウ糖』です。

ブドウ糖は、血液に運ばれてからだの隅々の細胞に送り届けられますが、そのときに、細胞にブドウ糖を受け渡す重要な役割を担うのがすい臓から分泌される『インスリン』というホルモンです。

ところが、糖尿病の患者さんには、このインスリンが不足していて、この機能がうまく働いてくれません。

そのために、血液の中にはブドウ糖がたくさんあるのに、細胞には届けることができず、細胞が栄養不足になって働きが低下してしまいます。

さらに、細胞の栄養不足を補おうと、体が筋肉などのタンパク質を削ってこれをブドウ糖に分解し、血液中に放出するようになります。

それでもインスリンが足りないために、栄養は細胞に届かず、血液中のブドウ糖はますます余って血糖値だけが上がるという悪循環になるのです。

本来であれば、傷は新たな細胞に覆われて治っていくものですが、治るはずの傷は、タンパク質が合成されないために、表皮も組織もなかなか回復することができないというわけです。

恐ろしいことに、血糖値が高い方の体の中では、このようなことが起きていたのです。

歯槽膿漏が糖尿病を悪化させている!

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糖尿病にかかると血糖値が上がり、血管がもろくなります。

そのため、免疫反応が低下して炎症が起きやすくなったり、血流が悪くなって傷の治りが悪くなってしまいます。

また、神経や目にも異常をきたすこともあります。

歯科の観点からは、もし、糖尿病の患者さんが、お口のケアを怠った場合、簡単に歯肉炎になってしまい、さらに仮にそれを放置した場合には、重度の歯周病になる可能性があることを警告しておきます。 

では、なぜ、歯槽膿漏があると、血糖値が高くなるのでしょうか?

歯槽膿漏のような慢性疾患があると、炎症性物質であるTNFαが多量に分泌されて、このTNFαがインスリンの働きを抑制してしまうため、血糖コントロールが悪化して、高血糖状態になります。

また、反対に、歯槽膿漏治療を行い、病原性細菌を取り除いて炎症が消えると、炎症性物質の分泌も抑制されて、結果的にインスリンの抵抗性も減ることになり、血糖コントロールが改善します。

実際、2型の糖尿病で重度の歯槽膿漏をお持ちの患者さんで、歯槽膿漏治療をすると、血糖値が改善した事例が多くあります。

 

このように、歯槽膿漏と糖尿病の間にも、やはり密接な関係があったのです。

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