人間の胃は食べ物の消化のために、胃酸やペプシンを分泌しています。そして、通常、健康な胃は、胃粘液を分泌して胃酸から胃の粘膜を守っているのですが、過労や精神的なストレスで胃酸の分泌と胃粘液とのバランスが崩れると、胃酸やペプシンが胃の粘膜までを消化してしまい、欠損(潰瘍)が生じます。胃潰瘍による胸やけ、食欲不振、胃部の不快感などの症状が出るのはそのためです。
また、リウマチや高血圧症などの慢性的な病気で解熱消炎鎮痛薬や降圧剤などを長期に服用していたり、胃酸過多、アルコールの摂りすぎ、食物をよく噛まないで飲み込むなど胃に過度な負担がかかると胃粘膜の血液循環が悪くなって、胃潰瘍になる場合があります。
また、最近では、胃の粘膜の中に生息しているヘリコバクター・ピロリ菌が見つかり、細菌感染によりその細菌が作り出すさまざまな物質によって胃潰瘍が起こることもわかってきました。ピロリ菌に感染するとまったく感染していない人に比べ、胃ガンになるリスクが10倍にもなると言われています。
以前から夜中に胃が痛んだりすることがありましたが、ある朝、激しい胃の痛みを感じると同時に、突然大量の吐血をしました。内科を受診したところ、「急性胃潰瘍」と言われました。
そして、胃潰瘍の原因が歯の状態によるものであったことがわかりました。以前から歯周病であることは分かっていましたが、忙しくて治療を続けることができず、口の中に血がたまったりすることもときどきあったので、症状は悪化していたと思います。そしてしばらく前から、食事中にものを噛むと歯が痛み、特に痛みのひどい奥歯ではものが噛めなくなり、あまり噛まずに飲み込むことが多くなっていました。
そうすることで胃に負担がかかり、胃の痛みも起きるようになっていましたが、鎮痛剤を飲んで痛みを和らげてやり過ごしていました。そして、病院に行って初めて、胃潰瘍になるまで胃を酷使していたことが分かりました。その後、歯科の治療をしてもらい、胃の痛みが起きることもなくなりましたが、食べ物をよく噛んで食べるためにも、歯や歯肉の健康は何より大事なのだと思い知った事件でした。