歯槽膿漏患者は健康な人に比べて心臓病にかかる危険度が2倍程度高いとされています。
さらに、歯槽膿漏菌が心臓の管を詰まらせたり、細胞を傷つけたりすることから、心臓病や心臓発作と歯槽膿漏には密接な関係があることが分かってきています。
心臓に栄養を運ぶ冠動脈は、酸素や栄養分を心筋に運ぶ血管で、心臓の周りを王冠のように3本の太い枝状でめぐっています。
歯槽膿漏菌は、この太い血管に血栓を作ったり、血管壁を傷つけたりすることが分かっています。
また重度の歯槽膿漏で多く検出される菌にPg菌という菌があります。
このPg菌が持っている酵素は、血小板のかたまりを作りやすくし、血栓を作りやすくします。
また、Pg菌は血管の内側の細胞に入り込んで増殖し、血管の壁を傷つけることが明らかになっています。
疾病との因果関係を証明するかのように、動脈硬化や大動脈瘤にかかった細胞からは、多くのPg菌が見つかっています。
近年、米国では、こんな考え方が存在感を増しつつあります。
『 Periodontal diseases kill heart 』
(歯周病が心臓を死なせる)
この考え方は医療分野だけでなく、一般的にも広がってきています。
心臓病と歯槽膿漏の関係があまりにも密接なことから、米国の心臓外科医の中には、心臓手術の際に患者の口の中を見て、もし重度な歯槽膿漏を発見した場合は、手術を見送る場合があります。
人間は多くの細菌とともに共存しています。
高齢者や体力の低下した人は細菌に対する防衛能力が弱まり、歯周病や虫歯などを引き金として血液の中に菌が入り込んむ菌血症をおこすことがあります。
そして、心臓内部の壁や弁の部分に細菌が感染しておこるのが感染性心内膜炎です。
患者はもともと心臓内に弁膜障害などの疾患を持っている場合に起こりやすいと言われています。
例えば、抜歯などの外科処理が原因で血液中に菌が入り、心臓に行き、菌血症という状態になると、発熱や全身の倦怠感を引き起こします。
細菌が心臓の弁に付着してしまうと、その場所で細菌が繁殖してしまい、膿のかたまりを形成、やがて膿のかたまりや血のかたまりが崩れて他の血管に飛んでいきます。
飛んだ先の血管が脳の血管であれば脳梗塞を引き起こしますし、心臓に行く血管であれば心筋梗塞や心不全を引き起こします。
これが、急性であった場合、数日のうちに生命の危険にさらされます。
また、急性ではない場合、数週間から数か月かけて意識のないままゆっくりと発症します。
このため、心臓に異常のある人はあらかじめ抗菌薬を服用しながら抜歯や歯石除去などの歯科治療を行う必要があります。
歯槽膿漏と感染性心内膜炎の関係としては、病因として口の中の「連鎖球菌」があげられており、実際患者の血液中から検出されることが多いことが分かっています。
感染性心内膜炎は、歯槽膿漏菌によって引き起こされる場合もあります。
お盆休みのさなか、39度程度の発熱と全身のだるさが続き、脱水症状が起きてしまったために緊急入院となりました。
記録的な猛暑だったので、熱中症にかかったと思いましたが、検査の結果、医師からは細菌が血液中に入り込んだために起きた「感染性心内膜症」(細菌性心内膜炎)と診断されました。
細菌が血液中に流れ込んだ原因は歯周病ではないかということです。
以前から歯医者で歯周病の治療は続けていましたが、忙しくてなかなか治療を受けに行かれないこともあり、そうしているうちに、歯ぐきからの出血も起き、噛むだけでも痛いという状況になっていたのです。
歯周病が原因で心臓にまで病気を持つにいたるとは思っても見なく、真面目に治療していなかったことを後悔するばかりです。