高齢者(65歳以上)の死亡原因の第一をご存知でしょうか?
それは、肺炎です。この肺炎のうち、口の中の細菌が入り込み、肺炎をひき起こすものが、誤嚥性肺炎や嚥下性肺炎と呼ばれるものです。
かなりの頻度で、誤嚥性肺炎を起こした患者の肺から歯周病菌の原因菌が見つかることから、口の中の細菌と誤嚥性肺炎には強い関連性があるとされているのです。
年を取ってから、よくむせるという方はいないでしょうか。
高齢になると飲み込む力が落ちて、本来食道に入るものが気管支に入ってしまうことがよくあります。
そして、お口の中には数千億の細菌がいますので、お口のケアが十分でないと、細菌を含んだ唾液や食べ物が食道から胃ではなく、誤って気管から肺に入ってしまい、誤嚥性肺炎が起きます。
また、誤嚥性肺炎を起こす主な原因としては、
●食事中に誤って気管に入る場合
●睡眠中に細菌を含んだ唾液を飲み込んでしまう場合 があります。
ふつうは、細菌が誤って入りそうになると、咳をすることで吐き出すことができますが、高齢者の場合、吐き出す力が弱いだけでなく、反射が遅くてむせる間もなく知らないうちに誤嚥性肺炎を起こしてしまうことが少なくありません。
誤嚥性肺炎を予防するには、高齢者に限らず、お口の中を清潔にし、歯周病を予防することが大切です。
さらに、高齢者の死因別死亡原因は、肺炎は悪性腫瘍、心疾患について多く、肺炎の中でも多くは誤嚥性肺炎が原因と言われています。
歯周病を引き起こすのはプラーク(歯垢)と呼ばれる細菌の塊です。
プラークに含まれる細菌は、500種類以上とも言われていますが、中でも白血球に害を与えたり毒素を出すもので歯周病に関係の深い細菌は下記になり、誤嚥性肺炎の原因菌にもなります。
· (A.a菌)アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンス
· (P.g菌)プロフィロモナス・ジンジバーリス
· (T.f菌)タンネレラ・フォーサイセンシス
· (T.d菌)トレポネーマ・デンティコーラ
· (P.i菌)プレボテラ・インターメディア
81歳の母が脳梗塞で入院し、数か月の入院治療を経て、退院しました。
自宅にて家族全員で介護をしながら、訪問入浴サービスを受けるなどして、体を清潔に保てるように心がけていました。
ところが、1月の終わりごろ、食欲が急に減り、日に日に元気がなくなり、ひどい寝汗もかくようになったのです。
原因が分からないまま、ついに脱水症状が起きたため、緊急入院となりました。
検査の結果、母は「誤嚥性肺炎」と診断されました。
検査の時に口の中を確認したところ、数本あった歯の根元に食べかすや汚れがたくさんたまっており、舌の上にも細菌のかたまりが大量に付着していたとのことです。
介護している私たちも身体のことばかりで、お口の中はまったく気にしていなかったので、お口の中が不潔であったことが原因と聞いて驚いたとともに、母にとても申し訳ない気持ちになりました。
その後、お口の中をきれいにしてもらい、たまりにたまった歯石を取り除き、虫歯の治療も行ったことで、いったん落ち着きました。
再度誤嚥を繰り返さないように、家族でお口のケアの仕方の指導を受け、飲み込みの訓練も行いました。
お口の中が清潔になったからか、母も食べ物がおいしく感じられるようで、その後は誤嚥を繰り返すこともなく、元気に過ごしています。